シーズン総括その3~戦術変更とその失敗点 [湘南ベルマーレ2011]
選手を大きく入れ替えただけではなく、戦術も変える。これが反町康治監督がいうところの再構築の出発点だった。
2004年末からの継続路線によりJ2において少しづつ順位が上がり、昇格が見える位置にまでたどり着いた。そして目標であったJ1に到達したものの、それまでの戦い方では通用しないということを痛感したのが2010年。J1昇格という目標のその先、J1で戦い続けるための戦い方をJ2で身につけようということだった。
1年間ながらJ1を経験した今だから言えるが、やはりJ2とはレベルが違った。J1のチームは、J2では無視していた部分を必ずやビッグチャンスに結び付けてくるのだ。
例えばセンタリング。2009年における湘南の守備のひとつにセンタリングはある程度あげさせて構わないという部分があった。それは中に高さに強いジャーンがおり、跳ね返す確率も高かったという理由と、J2の場合そのセンタリングの精度が高くはないという理由があった。それに加えて、仮に精度が高いクロスが入った場合でも、それを必ずや得点に結び付けられるフォワードも数少ない。ゴール前においてマンツーマンで体をつけるような守備をし相手を自由にさせなければそうやすやすと失点はしなかったのだ。2009年の被シュート数は水戸、熊本についで多い625本。しかし失点は1試合平均1.02。これはリーグで3番目に少ない数字だった。
これらを踏襲して戦ったJ1だったがセンタリングの精度は高く、中でしっかりと仕事をするフォワードも多い。そして個々の力、フィジカルも強くマンツーマンでは太刀打ちできない場面がしばしば見受けられた。シーズン中盤から守備に対しての戦術が変わったように見えたが、付け焼刃では通用しなかった。今季はその守備の部分の戦術変更を行い、J1で戦い続けられるものに再構築を始める初年度であった。
シーズン総括その2~新規加入選手の明暗 [湘南ベルマーレ2011]
■期待されたレンタル移籍組
スポーツにおいて誤算はつきものだ。時としてそれは嬉しいものにもなれば、悲しいものにもなる。そして最初の誤算は少々悲しいものとなった。
今季レンタル移籍により湘南に加入した巻佑樹と佐々木竜太。共に田原豊、中村祐也と切磋琢磨すべき存在だったと思われる。しかしポジションを争うべきふたりが怪我で離脱を余儀なくされてしまった。結果巻と佐々木は開幕戦のスターティングメンバーとなる。
開幕戦で2得点をあげた佐々木には大きな期待が寄せられた。昨年のチーム内得点王であった阿部吉朗のレンタル移籍があったために、得点力に不安があったからだ。しかし佐々木はその後スランプに陥る。そしてチームとしては最低限の仕事である “走る” ことを疎かにしていた部分もあった。第12節後には反町康治監督もその点に触れている。その後佐々木の運動量は格段に上がり、チームの一員としての役割をしっかり果たせるようになってきた。しかし今度はゴールが遠のいてしまう。31試合1,507分の出場でわずかに3得点。フォワードとしては物足りない以前の結果になってしまった。一方怪我のためにほとんど試合に出場しなかった中村は5試合253分で3得点。1年間戦力として計算できなかった部分は当然マイナス評価ではあるが、得点のにおいを漂わせるという点においては佐々木を凌駕していたことも事実だ。
巻は第16節の怪我のために、シーズンの中盤以降はメンバーから外れてしまう。前線からの守備、体を張ったプレーには目を見張った。しかしやはり彼もフォワードである。12試合620分で無得点という結果には不満が残った。そして同じポジションの田原は、コンディションが整ってきた終盤においては彼らしいプレーが随所に見られた。攻撃時においてのポストプレイなどは数段上であったことはもちろん、これまでとは違いサイドに流れてチャンスを作るなど新たなスタイルも見出してきた。このふたりもシーズンの最初から最後まで、怪我もなく競い合っていればチームとしての結果も違っていたのかもしれない。
シーズン総括その1~チーム編成と序盤の連敗 [湘南ベルマーレ2011]
J1に昇格した2010年は惨敗に終わり、再度昇格を目指した2011年。しかし結果は14位。優勝を果たしたFC東京とは勝ち点31の差が、3位で昇格となったコンサドーレ札幌とも22の勝ち点差がついてしまった。
今季は最後までユニフォームの胸の部分にスポンサーがつかないなど、経営的にも苦戦が強いられたことも事実ではあろうが、やはりこの結果は物足りないものだ。幸いにも湘南はある程度 “開かれた” クラブである。それらの話も踏まえたうえで、今季を振り返ってみたい。
■年齢バランス重視のチーム編成
昨シーズン途中にジャーンが退団(のちに引退)し、村松大輔が清水エスパルスへ移籍。特にジャーンは高さもあり強さも折り紙付きだった。しかしチームとしては同じようなタイプの外国籍選手を獲得することはしなかった。そこには現在ある戦力の奮起を促すという側面もあったと思われる。
そこで獲得したのが大井健太郎(ジュビロ磐田・期限付き移籍)だ。チーム在籍5年目となる山口貴弘と同じ年齢であるふたりが切磋琢磨することによりチームの守備力を上げようという算段だ。
このような動きは他のポジションにも見られていた。田原豊に対しては巻祐樹(名古屋グランパス・期限付き移籍)、中村祐也に対しては佐々木竜太(鹿島アントラーズ・期限付き移籍)といった具合に、現有選手に対して年齢が違い、ポジションが同じ選手を獲得している。
すでにJ1を経験した永木亮太をはじめとした大卒3人は22、23歳。ユース出身や高卒選手であればプロ入り5年目に相当する。世界的に見るとこの年齢でチームの主力になっていることは少なくなく、むしろ頭角を現すには遅い年齢かもしれない。即戦力と見ると同時にここ数年在籍するユース出身選手のレベルアップのためにも必要な年代の選手たちだ。
年齢層的にもうまくいっているように見える補強ではあったが、一抹の不安があったことも事実だ。それは寺川能人の代わりの部分である。ベテランは一般的に選手の手本となり、試合中には選手に支持を送り、それらを実行できる経験もある。チームとしてはその部分を坂本紘司や臼井幸平に担ってもらいたかったことが分かるし、実際にそうなってほしいという気持ちもある。そして今季はそうなれるのか、そうではないのかをはかるシーズンであったのかもしれない。
昨季に比べると若い選手が増え、その年齢層にもバランスが取れたチーム編成となった。そしてシーズン序盤の好調さには、昇格の言葉を意識することも可能だった。
レビュー:J2 第37節 vsコンサドーレ札幌 [湘南ベルマーレ2011]
湘南 0 - 2 札幌
- 61分 古田 寛幸(札幌)
- 83分 宮澤 裕樹(札幌)
今季ホーム最終戦となる第37節。対戦相手は昇格を狙うコンサドーレ札幌。前回の対戦は震災による中断が明けた4月23日に行われた第8節、実質今季の2試合目だった。もう遠い過去の記憶となるその試合では、湘南が1-0で勝利をおさめている。
時は経ち両チームを取り巻く環境は大きく変わっている。湘南は反町康治監督の退任と、6年間在籍したアジエル選手の退団が発表された。湘南の歴史に名を残すであろうふたりにとっては、最後の平塚競技場での試合。是が非でも勝利で送り出したいところだった。
しかしそれも儚い夢に終わった。0-2での敗戦。この試合で見えた上位チームとの確実な差。これを必ずや詰め、再びJ1で戦うと誓うことこそ、退団するふたりへの手向けとなろう。
レビュー:J2 第36節 vs徳島ヴォルティス [湘南ベルマーレ2011]
湘南 1 - 2 徳島
- 22分 田原 豊(湘南)
- 61分 徳重 隆明(徳島)
- 77分 徳重 隆明(徳島)
強い風にのった雨が競技場全体をたたきつける。キックオフ直後、菊池大介がドリブル突破を計るもボールがピッチの水溜りにとられ、やすやすとボールを失ってしまう。パスも同様で、予想はしていたが素晴しい “サッカー” が見られる状態ではないなということを実感した。
と同時に似たような状況で行われた試合を思い出す。9月19日に行われた第28節 徳島対FC岐阜の1戦だ。鳴門大塚で開催されたこの試合でも、朝から激しい雨に見舞われていた。特に前半、徳島が攻め込むゴール側の水溜りは顕著で、強いパスを出してもことごとくボールはスピードを失っていた。岐阜の守備陣に手を焼いていた徳島ではあったが、ディフェンスラインの裏に “跳ねた” ボールに反応した柿谷曜一朗がゴールを決めると、後半にはPKを含めて3得点。失点もあったが結果4-1で徳島が勝利している。この試合の後半ではシンプルながらも要所で個人技が光り、完全に岐阜を圧倒していた。
前半に1点をあげた湘南ではあったが、後半は徳島対岐阜のような展開になってしまう。しかし惜しむらくはその2失点ともがディフェンスのミスからのものであったことだ。完全に相手のかたちとなり崩されたのではなく、ミスからの失点。それが現在3位につける徳島との差なのである。
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